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恩田 千鶴
Chizuru Onda
G/9プロジェクト事務所所属
きっかけは些細なことだった。 猫さん(年齢体重非公開)がうちに来てどのくらい経った頃だろうか。カリカリ(ドライフード)は決まった銘柄を食べるのに、カンカン(ウェットフード)は直ぐに飽きてしまうのだ。 夏のせいだったのかも知れない。ただの気まぐれだったのかも知れない。 でも食べないことに心配をつのらせた主(私)は、猫界で魔性のおやつとして有名な「◯ゅ~◯」に手を出してしまった。まずはお試しで半分だけ。 噂に違わぬ爆発的な食欲! 怖いくらいの久しぶりに見る勢いのある食欲! とはいえ欲しいままにあげてはいけないのが健康管理というもの。ここは我慢を覚えて貰わないと。心を鬼にしてオヤツケースに「◯ゅ~◯」をしまう。 猫さん「……」 苛められたような顔で主をみつめる。もっと寄越せという無言の圧が身体中から溢れている。 主「も、もうおやつおしまいだよ」 猫さん「……」 長い沈黙のあと、そっと「◯ゅ~◯」を差し出す。 主「も、もうちょっとだけ食べる?」 猫さん「…………」 ちょいちょい。左手で軽くオヤツをさわる。 え、なにいまの可愛の。初めてみたんだけど。 主「た、食べるの?」 猫さん「………………」 ちょいちょい。 主「うぼあぁぁぁぅ‼」 可愛すぎて思わす変な声がでた。こっわ、可愛くてこっわ。いやー、可愛すぎて恐ろしいわ。 そしてこれは猫さんが主を思いのままに操ることになる序章となる。 ちょいちょい。猫さんと主の攻防は今日も続くのだった。
長野 佐和子役
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